最近よく耳にする「エコツーリズム」という言葉。
何となくイメージは出来るものの言葉の定義はよく分かりません。
そこで旅行会社社員でもある私が「エコツーリズム」について詳しく解説していきます。

この記事を読むと分かることはこちら。
- 「エコツーリズム」の言葉の定義
- 「グリーンツーリズム」や「サスティナブルツーリズム」との違い
- 日本での「エコツーリズム」の取り組みや課題
- 旅行者の私たちに出来ることな何か
観光業に携わる方も、旅行好きの方も、新しい旅の形を一度考えて見てください。
「いきなりエコツーリズムに取り組むのは難しい」と感じるかもしれませんが、内容を理解すればハードルは低くなるはずです。
時間がないって人は「旅行者の私たちに出来ること」だけでも読んでいってください!
┃「エコツーリズム」とは自然や環境を守りながら地域の魅力を伝えること

エコツーリズムとは環境省により「自然環境や歴史文化を対象とし、それらを体験し、学ぶとともに、対象となる地域の自然環境や歴史文化の保全に責任を持つ観光のありかた」と定義されています。
もっと嚙み砕いた言い方にすると、
「自然や環境を守りつつ、地域の魅力を旅行者に伝える観光方法」と言えるでしょう。
またエコツーリズムを行う目的は、
「地域固有の自然環境や歴史文化を守ること」。
観光客に地域の観光資源の魅力に伝え、その価値や大切さを理解させる。
ここまでは通常のツーリズムと大きな違いはないですね。
その観光による集客に取り組むなかで地域住民も地域の魅力や価値を再認識し、保護に繋がる仕組みや持続可能な観光方法を作るということを目指しています。
環境省が定める推進方策
環境省はエコツーリズムを進めるために5つの方策を発表しています。
環境省が定める5つの推進方策
- エコツーリズム憲章:エコツーリズムの理念を多くの人に伝えるための取決め
- エコツアー総覧:インターネット上でエコツアーの情報を公開
- エコツーリズム大賞:エコツーリズムを実践する地域や事業者を表彰
- エコツーリズム推進マニュアル:エコツーリズムを進めるための手法やポイントをまとめたマニュアル
- エコツーリズムモデル事業:エコツーリズムを取り組む地域を支援
環境省はこれらの方策に基づいて、エコツーリズムに取り組む地域を増やすためにエコツーリズムの拡大を進めます。
どちらかと言うと事業者向けの内容ではありますが、旅行者も旅行先の地域がエコツーリズムを推進しているかを知る資料にもなります。
(参照:環境省HP)
「グリーンツーリズム」「サスティナブルツーリズム」との違いはあるの?
エコツーリズムと近い言葉として「グリーンツーリズム」や「サスティナブルツーリズム」という言葉があります。
全く同じ意味ではないのでその違いを明らかにするため、
それぞれの観光方法の目的を比較してみました。
- エコツーリズム:自然環境や歴史文化を守る
- グリーンツーリズム:農山漁村で農漁業体験を楽しみ、地域の人との交流を図る
- サスティナブルツーリズム:観光地本来の姿を持続的に保ち、観光地に住む住民と観光客は相互に潤うこと
このように目的を比較してみると「エコツーリズム」と「サスティナブルツーリズム」は似た性質を持ちますが、「グリーンツーリズム」は別物だという事が分かりますね。
「グリーンツーリズム」では体験や交流をするために新たな宿泊施設などを作ることもありますが、「エコツーリズム」「サスティナブルツーリズム」は新たな観光施設を作ることはありません。
旅行事業者にとっては「今あるモノを最大限に活かす」という形の「エコツーリズム」や「サスティナブルツーリズム」が取り入れやすいのではないでしょうか。
┃日本での取り組みと事例

次に日本でエコツーリズムを実践し、成功した例を紹介したいと思います。
「知床」や「屋久島」は早くからエコツーリズムに取り組み、世界的にも有名な地域となりました。
今回は2019年に環境省に認定されたばかりの3つの団体を紹介いたします。
1.奈良県川上村
奈良県東部に位置する上川村は吉野川の源流の地であり、村の面積の約95%を山林が占める自然豊かな村です。
また室町時代から続く吉野林業の中心地、日本三大人口美林の一つとして知られています。
そんな川上村で行われているエコツーリズムの例がこちらです。
- 水源地の森ツアー
- 星空観賞
- キャニオニングやカヌーなどのアクティビティ
- 後南朝の歴史を巡るツアー
- 遊休農地の貸し出しと野菜作り指導
吉野川の源流という土地柄を活かした「源流ツーリズム」を展開しています。
2.阿蘇山周辺地域
阿蘇山周辺の地域には豊かな自然と世界最大級のカルデラ地形があり、その一帯は「阿蘇くじゅう国立公園」に指定され、さらに「世界農業遺産」「ユネスコ世界ジオパーク」の認定を受けています。
そんな阿蘇山周辺で行われているエコツーリズムがこちら。
- 熊本地震復興支援ツアー
- ホーストレッキング
- 阿蘇ジオツアー
- 熱気球体験
- 渓流トレッキング
阿蘇地域の自然環境保護しつつ、それを活かし、地域固有の魅力を伝えていくことで震災からの復興、そして活力ある持続的な地域づくりへと繋がっています。
3.群馬県前橋市
群馬県の県庁所在地である前橋市の北部に位置する「赤城山」に関するエコツーリズムです。
赤城山にはモウセンゴケやクサタチバナといった貴重な種類の植物が多数生息し、白樺牧場では10万株のツツジが開花期になると咲き誇ります。
そんな赤城山で行われているエコツーリズムがこちら。
- 普段は入れない「赤城白樺牧場」レンゲツツジと新緑満喫ツアー
- 赤城山雪上体験ツアーでのわかさぎ釣り体験
- 赤城山スノーシューハイキング
- 星空観賞
都心から約2時間という立地の良さを活かし、首都圏でのエコツーリズムの需要に応える存在になる可能性がある注目の観光地です。
┃「エコツーリズム」が抱える課題

1.環境保護と観光復興のバランスの難しさ
エコツーリズムの目的である「環境保護をしながら観光を成立」させるには、両者のバランス感覚が非常に難しいです。
観光復興のために人が増えると、いくら気を付けていても自然の負荷はかかります。
それを避けるために観光に制限も設けすぎると、観光業としての事業が成り立ちません。
このバランスを上手に取ることが今後の大きな課題となっています。
2.エコツアーガイドの確保
歴史ある自然や文化を伝えるには、経験豊富なその土地を熟知したツアーガイドの存在が欠かせません。
しかしツアーガイドの高齢化が進み、後継者不足が囁かれています。
観光客を満足させるツアーガイドの育成に早い段階から手を打たなければなりません。
3.旅行者の「エコツーリズム」に対しての関心の薄さ
上記2つは旅行事業者の課題でしたが、最後は旅行者の課題です。
2019年にBoocking.com(ブッキングドットコム)が発表した「サスティナブルトラブル」に関する調査で日本人のエコに対する関心の低さが明らかになりました。
世界の旅行者の73%が「次世代のために地球を守るには、人々は今すぐ行動しサステイナブルな選択を行う必要がある」と答える一方、日本ではサスティナブルなな選択の必要性を感じているのは40%のみとなりました。
また日本の旅行者の34%にとって「旅行は特別な時間であり、サステイナビリティについては考えたくない時間である」という、悲しい結果も出ています。
大きな課題の一つとして日本人のエコやサスティナビリティの意識を高めていくことが挙げられます。
┃旅行者として出来ること

こちらの記事を読んでいる方の多くが「旅行者」という立場だと思います。
「エコやサステナビリティに興味があるけど、旅行をする時に出来ることは?」
という疑問を解決していきたいと思います。
1.エコな活動をしているホテルを選ぶ
旅行で大きなウェイトを占めるのが宿泊施設。
民泊やゲストハウスなどといった地域密着型のホテルもいいですし、
「環境保護活動」をしているリゾートホテルや旅館も少しずつ増えていきました。
宣伝のようで申し訳ありませんが、
私のブログでは「エコな活動をしているホテル」をメインに紹介しています。
例えば、使い捨てのアメニティを撤廃している、タオルやシーツの洗濯には環境に優しい洗剤を使う、食品廃棄を減らす努力をしている、などなど。
私のブログで拾いきれていないホテルや旅館もあるかもしれませんので、
皆さんが「泊まりたい」と思ったホテルが「どんな環境保護活動をしているのか」
というアンテナを張ってみてください。
2.自分が体験した旅先での「エコ」を発信する
SNSや発展した現在、
個人が発信する情報での注目を集めることがあります。
エコツーリズムを推進していくには
エコツーリズムを必要とする消費者の需要が何よりも大切になります。
誰もエコツーリズムを求めていなければ旅行事業者も本気で取り組むことが出来ません。
エコツーリズムを体験した「生の声」を発信し、
エコの輪を広げることで大きな需要を生み、そこに経済が生まれます。
持続可能な観光を作るには「経済」は必須です。
ぜひ、エコな体験をされたらSNSで発信してみてください。
┃まとめ:エコツーリズムは誰かの気づきによって成り立つ
エコツーリズムについて理解を深めることが出来たでしょうか。
次回の旅行に役立てば嬉しいです。
「エコツーリズム」を広めていくためには、
自然や文化をこれから先も残したいと感じた人の想いが必要になります。
皆さんの気づきや思いをぜひ発信して「エコの輪」を広げていきましょう。
コメント